「温故創新」240126 N1380 伊波喜一

京アニの 放火殺人 極刑に 死刑判決 闇の解明

 風が唸っている。公園の木の葉が、風に巻かれて隅に集まっている。

 36人が死亡した19年京都アニメーション放火殺人事件の判決が、京都地裁で下された。裁判長は「人命の尊さを全く顧みず、36人の生命を奪い、34人を危険にさらした罪責は極めて重い」とし、求刑通り死刑を言い渡した。

 今回の裁判の争点は、青葉真司被告(45)の刑事責任能力の有無である。弁護側は両親の離婚や父親からの暴力、父親の失業に伴い転居を繰り返すなど、「順風満帆とはいえない人生を歩み、分岐点の多くで悪い方を選んだ末の事件」としている。

 一方検察側は、「自身の人生の行き詰まりを、京アニに責任転嫁した理不尽なもの」として、死刑を求刑していた。刑事責任能力とは物事の善悪を判断し、行動を制御する力のことで、犯罪行為に対して刑事責任を負わせる前提となる。

 検察側は、被告が放火殺人を考えてから実行まで約8カ月間あったことや、犯行直前に現場近くで10数分間の逡巡があったことから、心神喪失(罰せず)でも心身衰弱(刑の減刑)でもないとしている。 

  世の中には青葉被告と同じ境遇にあっても、そうならない人もいる。なぜ放火したのか、その直接の原因の奥底にあるものを、被告が語り切れているわけではない。

 その闇を解明しなくては、真の解決に至らないのではないだろうか。