「温故創新」230710 N1231 伊波喜一

嫉妬など 人と比べず 我が道を 信ずる道を 進むひたすら  

 昨冬の剪定で芽を刈り過ぎたようで、今夏はブルーベリーの実がほとんどない。ほんの一握りを、摘み終えてしまうようだ。

 人は比べる生き物である。傍から見ると何不自由なく生きているように見えても、当の本人は自信が持てないでいる場合がある。

 学生のうちは成績の優劣、見た目や小才能で一喜一憂する。社会人となってからは、社会的立場や収入の多寡、世の中のトレンドに、神経を尖らせる。しかし相対的な比較は、結局神経をすり減らす以外の何ものでもない。

 明治生まれの祖母は尋常小学校初等科を卒業して、働きづくめた。畑仕事に汗水たらし、子孫や親戚の子ども等に無償の愛を注いだ。

 物事の是非に厳格で、ウソをつくことを許さなかった。スキャンダルめいた話には、一切耳を貸さなかった。他を誹謗したり、一緒になって悪口を言いふらすなどは言語道断だった。

 相手に非があっても弱い立場の者を責めず、むしろ庇いだてしていた。あれこそが、明治人の気骨なのだろう。

 戦争による肉親との愛別離苦や病魔との闘いがあっても、祖母は決してへこたれず、人を嫉まなかった。自分には自分の生き方がある。人様にはその人の生き方がある。真似しても仕方ない。

 そのような信条を自らの根本において生き抜いた祖母のつぶやきを、懐かしく想い出している。