「温故創新」200105 N365 伊波喜一

正月の 朗読会を 楽しみに 集まる人に 声の励まし 

 第12回ひびき発表会が無事に終わった。毎回の発表を楽しみにして下さっている100名の聴き手で、ホールは満員になった。有り難いことである。今回小生は「ぜにまくら」という小品を読んだ。東北の田舎町が舞台で、中風に当たった爺さんにあやかって、ぜにまくらを欲しがる人々が巻き起こす滑稽な話である。83歳を祝う際に使われるのがぜにまくらで、その前日に枕の下に小銭を敷き並べ、それをお祝いとして配る風習がある。滑稽といえば滑稽だが、人の欲望や願望とは案外、そういうものなのかも知れない。少しでも運気のある方へ・運のある物へ・運の良い人へと向かっていくのは、人の常である。ましてや不景気であれば、尚更のことであろう。その心理の隙間に付け入る人がいるのも、これまた人の世の習いである。ウマイ話には用心するに越したことはない。 アンケートの中に「読み手の声にホッとする」「新春(春)が来たような気がする」とあった。人の声には不思議な力がある。人生の幾山河を乗り越えて来た人の声には、人の心を揺り動かす何かがある。そこには遠く及ばないが、一歩でもその高みに届くよう励んでいきたい。