「温故創新」191030 N343 伊波喜一

同苦する 祖国追われし 民哀れ 我身差し措き 難民支援

 緒方貞子氏が亡くなった。享年92歳。難民支援に捧げた生涯だった。国連難民高等弁務官として、悲劇が生じた国から逃れたくても逃れられない人々を、国内避難民として初めて国連の保護の対象とした。また、湾岸戦争後のイラク国内のクルド難民に、国連難民高等弁務官事務所の支援を受けさせた。独裁的国家の指導者と渡り合い、筋を通し、解決の糸口を見い出すタフな行動力。博愛という言葉は緒方さんのためにある。 曰く「文化、宗教、信念が異なろうと、大切なのは苦しむ人々の命を救うこと。自分の国だけの平和はあり得ない。世界はつながっているのだから」「忍耐と哲学をかければ、物事は動いていく」「あいまいで不透明な問題などというものはない。あいまいで不透明と考えるのであれば、それを個々の課題に落とし込み、課題ごとの方策を考えていくことが肝要である」。ここに緒方さんの真骨頂を見る思いがする。 今、世界中が自国主義に陥入り、排他的になっている。しかし、そこからは何の解決も幸せも生まれてこない。そのことを、緒方さんは行動を通して示してくれた。 偉大なコスモポリタンの冥福を心より祈る。