「温故創新」231101 N1322 伊波喜一

紙文化 衰えゆくか 本離れ 書籍の未来 書店の行く末      

 出版業界の行く末に、懸念の声が止まらない。先ず、ミリオンセラーが出ない。映画やテレビで話題になっても、それがイコール原作を読むことにつながっていかない。

 また紙の本はスペースや処分に手間がかかるため、敬遠されている。 

 日本では、新刊が1日200点出版されている。1年では7万3000点にもなる。当然、書店に並ぶのはごく一部となる。そこで、配本を行う出版取次会社に、仕入れる本の選定を頼っている。だから、自分にとって読みたい本が、書店に並ぶとは限らない。

 加えて、輸送コストの上昇がある。2024年問題は、物流業界全体に時間外労働の上限制限がかかる。売りたい本を売りたいタイミングで店頭に置くことが、ますます難しくなる。

 これまでは本を書き、それを読むことで、オピニオンリーダーとなることが出来た。今は情報が溢れかえり、新陳代謝が瞬く間に起こる。結局、作家がどのような考えを持ち、それを社会の中でどう実現しようとしているか、作家の資質が問われる。人権や福祉、教育、SDGsなど、日々直面せざるを得ない課題を、もはや避けては通れない。

 日本は山林仏教のように人里離れて、唯我独尊を尊しとする風潮が強い。しかし、この複雑な時代を乗り切るには、我関せずでは個人も国も成り立っていかない。崖っぷちの出版業界がこの危機を好機と捉えるなら、大きく飛躍していくだろう。