「温故創新」230511 N1210 伊波喜一

眼差しと 笑顔の奥に 温もりを 出会いの時を 今に感じて

 早いもので、もう18年前になる。初めて管理職となったA市S小のPTA会長をされていたのが、Iさんだった。

 本来なら会長の任期を終えていたのだが、筆者が新米管理職ということで、1年残留して下さったと聞いた。その心遣いに違わぬ、きめ細やかな人柄だった。

 ベテラン管理職のあとを受けて、さぞ心細い表情をしていたのだろう。右も左も分からず戸惑っている筆者に、さり気なく声かけしてくださった。包み込むような笑顔と物柔らかな口調が、カチコチに張りつめていた筆者の心を溶かしてくれた。

 ある月の巻頭言に、地域で育てている蛍のことを取り上げて書いた。筆者の幼少時の思い出と重ねて書いたが、正直、書きあぐねた。決して上手い文章とは言えず、意を十分に尽くせたわけでもない。

 ところがその文章を読んで、Iさんはこう言ってくださった。「我が地域の事を、これほど表現力のある文章で書いてくださっている。私はこのことを、嬉しく思います。そして、誇りに思います」。

 元より過分な言葉だったが、その一言は筆者に限りない自信を与えてくれた。それまでは、前任者と比べてばかりいた。が、これからは自身の歩みを日々大切にしてゆこうと、腹が定まった。

 もう一度でいい。Iさんの慈眼と謦咳に接することが出来たら、どれほど嬉しいことだろうか。