「温故創新」200615 N454 伊波喜一

鬱病の 引き金物質 確認し たんぱく質の 謎に迫るや       

 昨日とは一転、今日は気温が10度も高い。熱中症に用心だ。

 鬱病の引き金になるたんぱく質を、東京慈恵医科大学が確認した。このたんぱく質が確認された人は、そうでない人に比べ12倍強の割合で鬱病を発症しやすい。 

 慈恵医大では長年、疲労とウイルスの関係を調べてきた。疲労が蓄積すると、唾液中に「ヒトヘルペスウイルス(HHV6」が急増する。このHHV6は、突発性発疹の原因となり、乳幼児期に感染するとそのまま体内に潜伏感染している。

 鬱病患者の8割にHHV6が確認されている。 

 体が疲れるとHHV6が目覚め、唾液中に出てくる。その一部が口から鼻へ逆流し、においを感じる脳の中枢「嗅球」に達し、再感染を起こす。 

 再感染すると、嗅球で「SITH1」たんぱく質が作られる。このSITH1は脳細胞に過剰なカルシウムを送り込み、死んでいく。

 結果、嗅球の細胞死によって、記憶を司る海馬での神経再生が抑制されていた。 

 冥伏(みょうぶく)という言葉がある。たまたま発症しないだけで、潜在的に因子が潜んでいる状態をいう。

 医療的知見を活かして発病因子を上手にコントロールし、発症させない社会のあり方を、模索する時が来ているのではないだろうか。