「温故創新」190228 N260 伊波喜一

日本の 良さを伝える 伝道の 道を究めて 巨匠逝くかな 

24日、日本文学を海外に紹介し続けたドナルド・キーン氏が亡くなった。享年96歳。キーン氏は日米開戦に伴い1942年、米海軍日本語学校に入学した。沖縄戦に従軍し、最前線で日本兵に投降を呼びかけた。2011年に起きた東日本大震災を機に、日本国籍を取得したことも記憶に新しい。1980年代に新聞連載していた「百代の過客」を読んだ時には、作者が外国人だとは思えないぐらい流ちょうな日本語と語彙の豊富さ、そして豊かさに圧倒された。日本文化の奥深さと同時に、日本語の美しさに気づかせてくれた。谷崎潤一郎川端康成司馬遼太郎等との交流から、日本文学のみならず日本というものの原型に深く迫っていけたのだと思う。

ネット社会になり、何でも瞬時に・簡便に情報を得ることが出来るようになった。じっくり・ゆっくり・深く・丁寧に学んでいたのでは、時代に取り残されてしまいそうになる。しかし、キーン氏は言葉という大地に埋もれた作品を手間暇かけて掘り起こし、光を当て、そこに新たな命を吹き込んだ。そして読み手に想を膨らまさせ、読むものの心を惹きつけた。柔和な笑顔がそれに重なって見える。