「温故創新」230815 N1259伊波喜一

負の遺産 家族の心 蝕んで 戦の愚か 骨身に沁みて    

 台風の上陸で、海も陸も空もダイヤが乱れに乱れている。お盆の時期に重なっただけに、人々の足を完全に止めてしまった。

 今日は終戦78年である。これまで、戦争の悲劇は死傷者の数で語られることが多かった。日本の場合、兵士の復員後の状況については詳細に語られることがなかった。

 旧日本軍は心に傷を負った「精神神経疾患」兵士の数を、把握していた。専門の国府台(こうのだい)陸軍病院の資料では、1万人が入院していたという。しかし、陸軍や米国の資料から推測すると、現在のPTSDに該当する人々を含む精神神経疾患の兵士は、戦時中だけで数十万人に上ったと推測されている。

 米同時多発テロ後20年間の対テロ戦争では、米軍の戦死者は7千人だった。ところが、自殺した現役・退役軍人は3万人にのぼる。

 銃弾に斃れた兵士の数の4倍強が、精神的に追い詰められて亡くなっている。国のために戦った兵士達が、生きていく意味やこの世に存在する意義を感じられず、自死を遂げている。

 本来なら明るい社会建設のために、自らの能力を活かすべき使命がある人達である。そうならずに、自死を遂げる。本人は元より、残された家族や知人のショックは計り知れない。

 このような戦争の負の遺産を、国民に背負わせ続けて良いものか。国家の戦争遂行、事後処理の責任は、極めて重いと言わざるを得ない。