「温故創新」230701 N1229 伊波喜一

引き出しを 祖母と母とが 使いしの 家族の思い出 今に生きなん  

 朝晩は風が抜けて涼しいが、日中は陽射しが肌に痛い。紫外線から、肌や目を守らないといけない。若くないので、直接対決はしない。 

 内装工事の様子を案内してもらう。台所や風呂、洗面所の生活雑排は、床下を通って外へ配管している。水回りがすっきりしていて、快適さを予感させる。勾配をつけて水を流すのに、苦労したようだ。

 応接間は間取りを広げ、向かい壁にベンチを拵えた。奥行きが深く、ゆったりと座れる。高さも程よく、向かい合って互いの顔を見渡せる。これなら、お年寄りでも寛いでもらえそうだ。

 背の部分は、元の壁板を丁寧に剥がして、リユースしている。ニスを塗りこんだ波板で、暦年の陽光で飴色が薄くなっていた。

 この波板は木目に溝を付けて組み合わせる手の込んだ仕様で、今では見られない技術とのことだ。壁板の背は、一部引き込みになっている。そのため、壁全体に奥行きが出ている。ここには、絵や写真などを掛けると味わいが出てきそうだ。

 奥行きの手すり部分には、祖母と母が使っていた引き出しの表面がそのまま使われている。取っ手金具の痕が丸く空いたまま使われていて、それが当時の様子を鮮明に思い出させてくれた。

 随所に工夫が施されていて、祖父母の思いを感じることが出来た。岡戸さんの言う「リノベーションは家の物語の始まり」が、少しずつ分かってきた。どんな家に生まれ変わっていくのか、楽しみである。