「温故創新」221109 N1136 伊波喜一

信長も 見たかもしれぬ ダブル食 宇宙の神秘 悠久の時               

 露(つゆ)で路面が濡れている。関東には早霜の予報が出ていて、冬支度が始まる。

 昨晩の「ダブル食」は実に雄大だった。皆既月食天王星食の「ダブル食」は1580年以来とのことで、安土城を築いた信長も見たかも知れない。「敦盛」を好んで演じた信長は、その時に何を思っただろう。

 波乱に満ちた自身の人生と栄枯盛衰に流転する人の栄華に、刹那を感じたかも知れない。往時の人々も、あの大満月が欠けていく様を眺めていたのだろう。

 それにしても、堂々たるあの満月の光は、悠久の時の流れを感じさせる。満月が欠ける途中に、その手前を飛行機が飛んでいた。満月の大きさに比べて、あまりにも小さな機体。その機体が、赤い光を点滅させて横切っていった。現代文明の高度な利器である機体が、満月の前には微小でさえもない。悠久の宇宙の流れの中では、航空機のスピードは刹那の一瞬でしかない。

 今後、日本で皆既月食土星食が同時に観察できるのは、2344年とのことである。322年後の世の中は、どうなっているだろうか。

人類は相変わらず、戦を繰り返しているのだろうか。それとも、皆で協力して、住みよい世界を築き上げているだろうか。

 人の世の刹那を忘れさせてくれる夜空の妙に、気持ちが安らいだ。