「温故創新」191207 N356 伊波喜一

便利さに 溺れることの 恐ろしさ 人の生き方 大地と共に 

 実家から車で足を延ばすと、谷間の僅かなスペースを生かして、畑が耕されている。天水を引き、水まきに生かし、葉野菜など植え付けている。丹念に耕されているのが、遠目からでも分かる。畑仕事を楽しんでいる様子だ。 食は命を養う。アフガニスタンでテロにあった故中村 哲医師は、広大な砂漠の一角に水路を通し、辺り一帯を緑に変えた。山あいから用水を引くのは困難を極めたが、傭兵で戦争に出ていた男達も帰郷し、協力して建設に携わった。炎天下40℃での作業は過酷を究めるが、農民達の根気強さは相当なものだ。用水が完成し、水を引き種を植える。 1年後いよいよ収穫が始まる。米・大麦・カブ・サトウキビなどが豊かに実り、収穫が始まる。日焼けした農民の一人は言う。「この地で農業が出来れば、誰も戦争なんかには行かない」。次第に何万もの人達がこの大地に戻り、畑を耕し、食を繋ぐ。そして、村民の発意で巨大なモスクを作り上げる。子ども達はここで勉強をし、大人達は雑談や相談、和解や調停をする。 食は命の源である。食を大事にする文化は人と人との繋がりを生む。日本の原風景でもある田畑を大切にしたい。