「温故創新」231213 N1346 伊波喜一

伝えたい 内容以上に 大切な 笑顔と態度 声の響きが          

 風が強く、窓を叩いている。遠くの山並みが、くっきりと見える。

 昼食時の混雑を外して、軽食を取りに店に入った。近くの席で、生後1歳前後の赤ちゃんを片手に抱えながら、2組の母親が話をしている。久しぶりに外出して昼食を取りながら、おしゃべりを楽しんでいるようだ。束の間のブレイクタイムである。

 子育ては圧倒的に女性に負担がかかる。家事の分担をしてその分は軽減されるといっても、子どもは本能的に母親を求める。いざという時の頼りは母親となる。どうしても、過重負担になってしまいがちだ。 

 その母親達が、帰り支度を始めた。片手に赤ちゃんを抱き、リュックを背負って大きな手荷物を持ち、ベビーカーまで押してゆく。それだけで、もう大変な量だ。文字通り、手一杯である。

 そんな状態で店のベビーイスを片付けようとするので、手間取っていた。手が空いていたので片づけたところ、とびきりの笑顔でお礼を返された。母親たちの喜びがストレートに伝わってきて、筆者の心の奥まで沁みた。大したことをしたわけでもないのに喜んでいただいて、むしろこちらの方こそ感謝したいぐらいだった。

 初対面の相手の第一印象に影響するものは、表情や態度が55%と半数以上を占める。肝心の話の内容は、7%にしか過ぎない。ちょっとした心づかいが、その人の笑顔や態度に表れる。そして相手に喜びを与えると同時に、深い印象を残していくのだ。