「温故創新」231206 N1340 伊波喜一

文物の 大交流の 足跡が 熱情こもる シルクロードか          

 紅葉が鮮やかな八王子の東京富士美術館に、上さんと出かけた。今回の展示は日中友好条約45周年を迎え、中国から貴重な文物を借りている。「世界遺産シルクロード展」とある通り、国内では見られない貴重な資料が展示されていた。大シルクロード展とある通り、広大なシルクロードの中から、選りすぐった品々を展示していた。

 日本では砂漠というと、西安の西の敦煌のイメージが強い。ところが、敦煌は砂漠への入口に過ぎず、その奥にはいくつもの広大な砂漠が横たわっている。それが中東や中欧、インドと繋がり、人と文物の交流を繰り広げてきた。砂漠の砂を遮るものは何もなく、僅かに点在するオアシスめがけて、行商や学問の旅が連綿と続いてきた。死と隣り合わせの中で、砂漠をくぐり抜けて文物を交易させた先人の歴史は、2千年以上に及ぶ。大情熱がなければ、成し遂げられることではない。

 往時のその情熱を、展示された文物が物語っている。後漢時代の「車馬儀仗隊」は青銅で出来ている。馬の脚の筋肉が盛り上がり、開いた口からいななきが聞こえてきそうだ。「瑪瑙象嵌杯(めのうぞうげはい)」は金細工で、優美だが重量感に溢れている。これは新疆ウイグル自治区からの出土で、当時の文化・芸術水準の高さが感じられる。ソグド語のマニ教法華経の写本も筆致が力強く且美しく、改めて言葉による表現の力を感じた。

 文化の力は時代や民族を超えて、勇気と希望を与えるものである。