「温故創新」230114N 1155 伊波喜一

一夜漬け 丸呑み込みで 暗記して 学び続けん 生涯持続

 大学入学共通テストが、今日から始まった。「この入試で、一生が決まる」というのは大袈裟だが、受験生やその家族にとってそう感じるのも無理はない。大なり小なり、その後の人生行路に影響を与えることは間違いない。

 最終段階の大学入試に焦点を当てて、昔も今も受験勉強花盛りである。英才教育、情操教育、専門教育と形を変えながらも、最終的に詰め込む。

 確かに、幼児教育の大切さは言うに及ばない。身体のバランス感覚や語学の修得などは、早いうちから慣れ親しんだ方がいい。「習うより慣れろ」は、陶冶の大切さを言い得ている。

 反対に物事の本質を掴む教育は、ある程度教養が身につかないと思考が深まらない。物事の類似性や関係性に考えが至らないと、抽象の芽は伸びてこない。

 暗記は、早いうちから始めた方が効果が出る。しかし、自分の言葉で考えてまとめるには、具象から抽象へと概括する力が求められる。その具象は、実体験の裏づけがあればあるほど、説得力を増す。

 人生経験や人生の年輪からつむがれる言葉には、普遍性がある。それは、具象から必要のないものを削ぎ落した結果、生まれたものだからだ。この抽象概念が身につくには、相応の経験と時間がかかる。

 熟成には、時間とそれを気長に待つ忍耐とが必要であろう。