「温故創新」210626 N799 伊波喜一

綿密で 感性溢れる 取材法 忖度なしの 知の巨人逝く                

 夜半に一しきり雨が降った。まるで驟雨のようだった。お陰で、寝苦しさから解放された。 

 立花 隆さんが急性冠症候群で亡くなった。享年80歳。

 かつて膀胱がんを患いながら、自身のがん治療そのものを取材対象にしていたことを思い出す。

 学生時代に読んだ「田中角栄研究」には、度肝を抜かれた。今太閤と呼ばれ、派閥の力で政権を乗っ取った角栄。その派閥づくりの原動力が、多額の現金である。集票の裏づけとして、現金が飛び交っている実態を突き止めた。

 その手法は「日本列島改造論」に見られるように、土地転がしで金を産むやり方だ。この悪弊が90年代のバブル期や、2020年のオリンピック景気にも影響した。

 絶対的権力を誇った現職総理に挑み、政治とカネの問題を社会に提起した功績は大きい。

 「日本共産党の研究」も丹念で急所を突く取材に舌を巻く。日本共産党の掲げる理念と現実とのギャップ、そこから起こる粛清の事実。現実組織の硬直化と矛盾を綿密に調べ上げている。

 一方で「宇宙からの帰還」や「臨死体験」など、科学と超能力という相反する分野にも卓越した取材力を発揮した。誰人も避けて通れない生死という命題に、謙虚に対峙した知の巨人に脱帽である。                                                合掌