「温故創新」210504 N746 伊波喜一

母逝きて 面影立たん 7年が 思い出すのは 在りし日のこと         

 空気は冷たいが朝から好天だ。今日は母の祥月命日。生きていれば92歳になる。

 その母が亡くなって丸7年が経つ。この間、家族を取り巻く環境も変わった。さざ波のように微細な揺れはあったものの、辿り着くべきところに辿り着いた感じがする。私達の行く先を案じていた母の願いが、きっと通じたのだろう。 

 お昼に母の好きだった品々を供える。八穀米、ごぼう、揚げ豆腐、こんにゃく、春巻き、キュウリの酢の物にサクランボを供え、報恩感謝の回向をする。 

 思えば、家族の無事と健康を何時でも何処でもどこまでも、祈っていた母だった。自分の事は後回しにして、家族や回りの事を気にかけていた。そんな母の祈りに守られて、これまで無事に生きてこられた。誇張ではなく、心からそう実感する。 

 母の世代は貴重な青春時代を戦前・戦中の軍国時代に過ごし、戦後の復興期を支えてきた。生き抜くことに精一杯で自分がしたいことも出来ず、我が身を振り返る余裕もなかった。

 そんな母が晩年、庭に花木を植え、野菜を育て、それを絵手紙にして孫たちに送ってきた。

 風物の特徴をとらえ、添えられた言葉が温かい。母の願っていた平和を守り抜いてゆこう、そう思っている。