「温故創新」201013 N561 伊波喜一

扉絵に 飛来菩薩の 絵が残る 死者を迎える 来迎図なり               

 中秋の風が心地よい。朝方は動くと、少し汗ばむぐらいだ。

 明日からは、ぐんと気温が下がるとのこと。陽気の移り変わりが、目まぐるしい。 

 平等院は、鳳凰堂創建時の木製中央扉に菩薩が描かれていると発表した。平安時代に描かれたこの扉は、江戸時代に交換された。

 扉は2枚1組の観音開きで、1枚は縦4・7m、横1・6mある。元々は鳳凰堂東側の正面中央にあった。1670年に交換され、保管されてきた。 

 肉眼では分からないが、斜めから光を当てた特殊な写真によって、横線を示すわずかな凹凸を確認した。北扉の中央付近で、複数の飛来する菩薩が見つかった。南扉には、建物や山が描かれている。 

 鳳凰堂の扉や壁には、九品来迎図が描かれている。これは生前の行いに応じて果報があるとする、来迎図である。

 因果応報を9ランクに分けて描いており、阿弥陀如来と菩薩が死者を迎えに来るとされている。扉絵は創建当初かつ国内最古の上品上生図と考えられ、国宝に匹敵する。 

 疫病の大流行した往時、人々は現世の地獄絵を逃れて極楽浄土を願った。しかし、どれだけ医学や科学が発達しても、人は生老病死から逃れられない。

 生死を逞しく生きる知恵が、求められているのではなかろうか。