「温故創新」200201 N377 伊波喜一

人類と チンパンジーの 分かれ目に 犬歯の退化 違いあり

 人類とチンパンジーは、類人猿の中で最も近縁関係にある。遺伝子の一致は98.8%にも及ぶ。つまり、人類とチンパンジーには共通の祖先があり、何らかの理由で分かれたと考えられる。ただし、人類とチンパンジーでは犬歯の退化に大きな違いがある。人類の犬歯が退化の一途をたどったのに対して、チンパンジーは大型犬の牙と同じくらい大きな犬歯を持っている。ご存じのように、チンパンジーの社会ではオスは序列化されており、メスとの交尾はボスに優先権がある。それを脅かすものには、犬歯を武器にして闘わなければならない。一方、人類は一夫一婦制かそれに近い社会を選択したため、鋭い犬歯はむしろ不要となった。何らかの必要性から人類は、個人の願望追求型から全体の利益追求型へと変わっていったと考えられる。この欲望制御から全体優先への志向の変換が、人類から犬歯を衰退させた原因であるところが面白い。今、経済的困窮者や障害者、性的マイノリティや外国人による差別の声を聞かない日はない。チンパンジーの犬歯に見られるように、個人や特定の集団に特化した考えは、長い目で見ると衰退の因となるのではなかろうか。