「温故創新」200131 N376 伊波喜一

海鳥の 体に溜まる プラごみの 食物連鎖 身に降りかかり 

 風の強い早朝、駅のホームに並んだ看板の上に一羽のカラスが舞い降りた。鋭い嘴で看板の隙間から何か穿りだしている。絶縁体のような白い詰め物を何度も穿りだし、いきなりゴクンと呑み込んだ。しかしけろりとした様子で、まるで食べ物でも呑み込んだかのようだ。それにしても、腹の中で発砲スチールが溶けずにいては、膨張感で気持ちが悪くはないのだろうか。 東京農工大や北海道大などが、難燃材や紫外線吸収剤などの化学添加剤を含んだプラスチックを食べた海鳥の脂肪や肝臓を調べた。その結果、それらに化学添加剤が蓄積することを実証した。オオミズナギドリのヒナ5匹には化学添加剤を含んだプラ粒入りの餌を与え、別の5匹には餌だけを与える。そして、肝臓、体内の脂肪、しっぽの付け根から分泌される脂を調べた。すると、プラ粒入りの餌を与えたヒナの添加物の濃度は、与えないヒナの何と91~12万倍にもなっていた。これは、添加剤の油分が胃の中で溶け出し、体内に蓄積するからだ。早急の対策が必要であると同時に、便利さと欲望の追求に歯止めをかけ、環境との共存を志向する哲学が、今求められているように感ずる。