「温故創新」200123 N372 伊波喜一

冤罪が 起こる陰には 功名の 心の隙間 魔物棲むか

 1996年、アトランタ五輪の会場近くの公園に、爆弾が仕掛けられ、100人以上の死傷者が出た。爆弾を発見・通報して多くの人達を避難させた警備員リチャード・ジュエルは、一躍英雄となる。

 ところが、地元紙とFBIが、第一発見者のジュエルが怪しいと報じたことから、彼と母親バーバラの人生は暗転する。彼は極悪人に仕立てられ、素性を暴き立てられ、マスコミと国家権力から追及される。その弁護を頼まれたのが、弁護士のワトソン・ブライアント。ブライアントは絶体絶命のピンチに怯むジュエルを叱咤し、言う。「ぺこぺこするな。堂々としていろ。なめられたらおしまいだぞ」。一見乱暴な物言いにも聞こえるが、本質を突いている。ここ一番という時に、持てる力を出せなかったら、いつ出すというのか。言うべき時に言わず、戦うべき時に戦わなければ、敵に蹂躙されてしまう。恥も外聞もかなぐり捨てて、まっしぐらに敵の本丸目がけて戦いを挑まなければ、本懐を遂げられるものではない。アメリカは間違いを糺し、学ぼうとする。一方、日本は間違いを隠し、認めようとしない。どちらに明るい未来が拓けていくか、明白であろう。