「温故創新」200119 N370 伊波喜一

難しき どうにもならぬ 我が心 窮地にありて 自制するかな

 人の心ほど御しがたいものはない。人は勢いに乗っているときは、いかようにも我が心を制御することが出来るように感じる。ところが、一旦リズムが狂うと、やることなすこと全て悪い方に流れていく。この負の流れを断ち切るのは、容易なことでは出来ない。毀誉褒貶に左右されず中道を歩める人こそ、まさに達人とよぶべきであろう。 ここのところ、国政や大会社を担う高位の人達の失言・失態・詐称が散見される。頭隠して尻隠さずのごとき、余りにも幼稚な理屈を並べ立てているのを見聞きする。時の人であれば輝きを放つのは当然である。その輝きが失せたときに、どのような態度と度量を示せるかが、大人(たいじん)である。そのまさかの時の腹のくくり方と鍛錬のなさが、露見してしまっている。 今、社会が求める教育は「これとあれをすればプラスになる」という加算法である。身につけるということに血眼になり、失ったときの処し方は話題にものぼらない。しかし、大事なのはむしろ、窮地における身の振り方である。マイナスの思考法とでもいえようか。戦国期の武将には、この覚悟で一代を築いた者が少なくない。学ぶべきであろう。