「温故創新」191221 N360 伊波喜一

   191221 N360 伊波喜一

 餌づけされ 人里近く 出没し 迷惑がられ 気の毒な猪(いの)

 これからが年賀状作成の追い込みである。来年の干支は鼠、今年の猪ともそろそろお別れだ。そのイノシシだが、ここのところ里山から人里に降りてきて、市街地を全力疾走する姿が見られる。原因は、秋の台風等で食料が無くなり、里山に降りてきたものの、田畑も実らず、食料を求めて市街地まで足を伸したようである。気の毒な話である。が、映像で見る限り、イノシシは(文字通り)牙を向き、猛烈な勢いで人に襲いかかってくる。体重も90㎏以上あり、ぶつかられば怪我では済まない。 本来なら山で暮らしていた動物が市街地に現れ、迷惑がられる事例は格段に増えている。サル然り、クマ然り、シカ然りである。山では木の芽や土中の虫などを食べているので、常に飢えた状態にある。しかし、一度人の食べ物を口にした動物たちは、元の粗食な生活には戻れない。結果として、人のいるところに現れる。 この半世紀、人は市街地に住み、野山に立ち入らなくなり山の手入れを忘れた。本来そこは、野生と人とが交わる境界であった。 今、私達は人というワンワールドに生きているが、それは脆い。イノシシの出没はその警鐘ではないだろうか。