「温故創新」181023 N253 伊波喜一

窓の外 差し込む光 柔らかに 光と陰の 陰影豊か 

 上野の森美術館で「フェルメール展」を観た。17世紀のオランダを代表する画家ヨハネス・フェルメールは、静謐な空間とそこに差し込む淡い光を描いた作風で、「光の魔術師」と呼ばれている。《牛乳を注ぐ女》《手紙を書く女》《真珠の首飾りの女》など、日本ではまず観る機会のない作品を直に観ることが出来たのは幸甚だった。 3世紀半の歳月を経て、往事の情景を彷彿とさせるその筆力には驚かされる。現代ならデジタルや高画質の撮影が可能だが、当時は記憶を再生する術は自身の記憶しかない。一瞬の記憶を永遠に留めるその洞察の深さに、驚嘆する以外にない。以前、レンブラントの《夜警》を観たときに感じた深い闇と微かな光の印象に通じるものを、フェルメールにも感じた。 現代社会に生きる私達は、光を消費して生きている。真夜中でも光に不自由することなく生活しているし、その生活のツールであるスマホやパソコンは、光なしには成り立たない。光を敬い、その味わいを描いたフェルメール。現代人が忘れかけていた光の大切さに、改めて気づかされた一時となった。