「温故創新」 191007 N329 伊波喜一

厳しさと 暖かさ 兼ね  備えたる 闘将逝きて 時代に幕が

 自転車で走っていると、近所の畑が丁寧に耕されている。葉物野菜がたわわに植わっていて、夏から秋への移り変わりを感じさせる。 

 金田正一氏が逝去した。86歳。20年間の現役生活で登板944、400勝298敗で完投365、三振4490は、他の追従を許さない。金田投手が打者の胸元にズバッと投げ込んでくる攻めの投球が、筆者も印象に残っている。 ノーサインで投げると言われていたが、実際には打者の打ち気を逸らす嗅覚が並外れていたのがその理由。投げる球種もストレートとカーブの2種類。並外れたパワーであったことは、疑いようもない。しかし、健康管理は徹底していて、登板の際には体を冷やさないように、汗をかいたらアンダーシャツを着替え、食事にも気をつけ摂生を心がけた。率先して練習に取り組み、巨人のV9を牽引した。 仙台に球場整備する時「最初はどんなチームも弱い。でもお客が来れば、チームは必ず強くなる。だから、投資を惜しんではいけない」と述べた。ファンの怖さと同時に有りがたさも知り尽くした者でなければ、言えない言葉だ。人は人によって活かされる。多くの人財を育てた金田氏は、名伯楽である。