「温故創新」190825 N300 伊波喜一

若き日に 自ら決めた この道を ひたすら走る 人と比べず

 近くの公園から、蝉の鳴き声が喧しい。ここのところ、トンボの舞いも目にする。いつの間にか、季節が秋へと変わっているようだ。

 矢沢永吉のドキュメンタリーを見た。ギター一本を持ち、18歳で広島から上京。5年の下積みを経て、キャロルで大ブレークする。その後ソロに転向し、日本からLAへ単身乗り込み、世界との差を身をもって知る。世界一流のアーチスト達とのコラボは、そこから生まれた。今年70歳になるが、ロックに対する思いはいささかも衰えていない。人生の酸いも甘いも噛み分け、より円熟味が増している。詩とメロディーが心のひだに入り込むように感じられる。  

 若い頃から矢沢は、自らに「あがけ」と檄を飛ばしていた。70歳になっても、そのハングリーさは変わっていない。「(ビッグになるには)あがいてあがいて、自分で這い上がるしかない。誰も助けてはくれないのだから」。自助努力せず周りの支援を当てにしても、果実は得られない。かりに得ても、それは借り物。長続きするものではない。 矢沢のストレートな語り口が、自分自身の夢を追い続けることの愚直さと素晴らしさに、あらためて気づかせてくれた。