「温故創新」230131 N1169 伊波喜一

忙しく 時間に追われ 情報を ながらをやめて 感じることに

 エッセイストの三宮麻由子さんは、4歳の時に失明した。その自身の経験を通して、「感じる」ことの大切さを綴っている。

 目で確かめられないので、三宮さんは1つ1つのことを耳で確かめていった。例えば、ウグイスが鳴き始めると春の兆しを感じる。その次にオオルリの声が聞こえるようになると、木々が青く新緑になったと分かる。オオルリの鳴き声から、その位置や自分の立ち位置まで分かるという。

 また、匂いからも季節を感じられる。秋の紅葉は初めは水っぽい香りだが、だんだんと乾いた感じになる。すると、見えていなくても「葉が色づいているな」ということがイメージできる。これを三宮さんは「シーンフル(風景でいっぱい)」と表現している。

 健常な私達は、風景を見てはいるが味わうことも浸ることもせず、景色を消耗しているだけかも知れない。目の前の風景に身を委ねて、その瞬間瞬間を味わっていく。子どもが一瞬に全力を込めて生きる姿を、現代人はどこかに置き忘れてしまったようだ。

 一度に多くの事を、効率よくこなす。あれもこれもと、時間を切り売りして生きる。現代人は、タイムパフォーマンスの呪縛から逃れられない。だからこそ、1日に1度はスマホを脇に置いて回りの風景に身を委ね、耳を澄ましてはどうだろうか。

 1日10分の習慣で、心身をリフレッシュさせてゆきたい。