「温故創新」220613 N1056 伊波喜一

足運び 顔と顔とを 見合わせて 人の温もり 直に伝わり    

 花壇のアサガオが、いつの間にか8こも色づいている。小ぶりだが色の出がよく、健気である。これから、毎日見るのが楽しみだ。

 お世話になったM先生の奥様にご挨拶をと、上さんと二人で青梅の日向和田まで足を延ばした。

  4年前に亡くなったM先生には、一方ならずお世話になった。思うように事が運ばず半ば腐りかけていた筆者を、M先生は小作駅近くの珈琲店に誘ってくださった。

 とりとめのない筆者の鬱憤を、先生は一言も言葉を挟まず、いつも最後まで聞いてくださった。そのことで、どれだけ慰められ励まされたことだろうか。

 その先生の回忌法要には、コロナ下で参加を見送らざるを得なかった。釈然としないまま、あっという間に3年が過ぎてしまった。

 時の過ぎゆくに任せるのが、歯がゆい。一目お会いして、亡き先生への感謝の思いを奥様に直接伝えたい。そこで、思い切って伺った。 

 伺って、本当に良かった。裏手の山には竹林が風に揺れ、トンビが上空を旋回している。ご自宅の楓を背景に、しばしM先生の思い出話に花が咲いた。

 共通の話題は時を越え、故人に色どりを添える。残された者にとって、そのことほど嬉しいことはないのではなかろうか。

 短い語らいではあったが、先生への何よりの供養になったと思う。