「温故創新」211016 N911 伊波喜一

懐かしい 記憶とともに 蘇える 心動かす 匂いの力     

 日中の陽射しは強いが、秋らしい好天が続いている。これから、どんどん空気が乾燥してくる。寝冷えしないように、気をつけたい。 

 新型コロナウイルス感染症の症状の1つに、嗅覚異常がある。普段はあまり気に留めないが、匂いの与える影響は大きい。

 例えば、風邪を引いたときに鼻が詰まると、匂いが分からなくなる。匂いに鈍感になると、周りの変化に疎くなる。

 また晴れた日に小径を歩くと、木々の匂いや草花の香りを感じて、その匂いに癒される。このように匂いの有る無しは、生活の1コマ1コマを印象づける。

 五感の中で、嗅覚には他の感覚器にはない特徴がある。それは認識された情報が視床下部を経由せず、記憶を司る大脳辺縁系に直接送られることだ。

 大脳辺縁系は本能や情緒と深く関わっている。そのため、嗅覚情報はある日ある時の状況を、鮮明に描くことが出来る。

 ある匂いを嗅ぐと、突如その時の記憶がよみがえり、郷愁を覚えるのはそのためである。 

 今、日本はどこもきれいになった。クサい匂いも消えつつある。しかし、生活には須らく匂いがともなう。もし全てが単一化された匂いになってしまったなら、不自然である。

 それこそ、何か偏っているのではないだろうか。