「温故創新」211001 N896 伊波喜一

毎回の 連載愉し コミックを 時代を築く 劇画の祖逝く

 都民の日の今日は、風雨が強く交通機関が麻痺している。全国的にも大きな被害がもたらされている。緊急事態宣言が明けただけに、影響の少ないことを祈るばかりだ。

 漫画家のさいとう・たかを氏が膵臓がんで亡くなった。享年84歳。「ゴルゴ13」「鬼平犯科帳」など、息の長いヒット作を連載し続けた。1968年から連載が始まった「ゴルゴ13」は東西冷戦を舞台に、不可能を可能にするスナイパーを描いた。

 小学生だった筆者は、ゴルゴの超人的活躍に惹かれた。また教科書ではなく、漫画から世界情勢を知る機会ともなった。

 作品は政治・経済・宗教・文化・人種問題などを下地に、推理の糸を紡いでいくような緻密さで構成されている。筆者も解説を読んで初めて、劇画の意図が分かったことが何度もある。

 美術館を舞台にしたある作品では、ホロコーストと画家、その作品との関係を描いている。

 人種問題を下敷きにしているこの作品は、中欧の人種や差別の歴史を知らないと理解が不十分となる。ちょっと調べただけだが、さいとう氏の旺盛な知識追究欲に舌を巻いた。

 早くから脚本・作画の分業体制を作ってきたこの作品は、今後もプロダクションによって継続されるという。氏の慧眼に驚くとともに、心よりご冥福を祈りたい。                                                                                                                                              合掌