「温故創新」210520 N762 伊波喜一

山桃の 便り懐かし 遠い日の 昔話に 祖母の温もり          

 今週は毎日、雨が降っている。先日、実家の庭の山桃が届いた。しばらく剪定をしていなかったためか、3年ぶりに実が生った。

 それにしても、実の色鮮やかさには目を奪われた。真っ赤に熟したものから桃色、黄色がかったものまで、色とりどりである。

 大きいものは直径2cmはあろうかと思うぐらいで、肉付きも厚く立派だ。

 味の方も熟したものは甘酸っぱいが、どちらかといえば酸っぱさが勝っている。小さい頃したように、少し塩をふって食べると甘さが引き立った。

 この山桃は楠を伐った後に、祖母が植えたものだ。祖母が小さい頃に食べた味が忘れられなくて、実のなる山桃にしたようだ。

 植えた当初は細くて丈夫に育つだろうかと思ったが、そのうちに枝を広げてきた。

 梅雨の長雨に根腐れもせず、炎天下の直射日光にも焼けず、台風にも枝を折られず、よく育ってきたと思う。

 今は茎が細くなってしまったが、島バナナなどもよく熟れた。柿は鳥たちのエサになったりしたが、祖母は実のなる木を植えていた。 

 野菜や果物は、時期時期に実を生らせる。

 手を加え育てたものには、格別の思いがある。

 実を食べる時に、植え手はこの世にいない。しかし、実に詰まった思いは残り続けるのだ。