「温故創新」210308 N689 伊波喜一

人類の 叡智集まる 最大の 発明なりき 本との出合い          

 陽が差さずにいると、日中でも肌寒い。ストーブを一日中焚いている。とにかく体を冷やさぬよう、注意が必要だ。 

 書き溜めたものを整理していたら、学生時代からの読書ノートが出てきた。細かい文字で行替えもせず、丁寧に書き留めている。

 今では題名と印象に残った箇所をメモすることが多いが、当時は一冊ごとに感想まで書き込んでいる。余程の執念である。

 そう考えると、図書館の果たす役割の大きさに思い至る。 

 こんな逸話がある。第2次世界大戦時、ヒトラーは率いるナチスドイツは、1億冊の本を葬ったと言われている。

 いわゆる、焚書である。

 対する米国は、国をあげて1億4千万冊もの本を戦場の米兵に手元に送ったという。

 当時の米国大統領ルーズベルトは、語った。

「本は永久に生き続ける。いかなる人間もいかなる力も、記憶を消せない。思想を、強制収容所に閉じ込めることは出来ない」。

 巷には他者を攻撃する言葉が、氾濫している。相手を叩き、一時の痛快に酔いしれる。

 しかし、そこから創造的な何かが生まれるのだろうか。 

 本を読むことは、他者の叡智を受け継ぐことだ。中でも繰り返し読みたくなる価値ある一書に出合えたなら、その幸運を喜びたい。