「温故創新」210114 N636 伊波喜一

大戦の 本質めぐり 書き残す 昭和の大星 輝き失せず                

 自転車のサドルに霜が降りている。が、今朝は幾分暖かい。しばらく晴天続きで、今夏の水不足が心配される。 

 昭和史の語り部とも言われる、作家の半藤一利氏が亡くなった。

 「日本の一番長い日」「ノモンハンの夏」「山本五十六」など、一貫して先の大戦の本質を描いてきた。なかんずく、戦争責任が曖昧なまま戦後に引き継がれたことを、克明な筆致で描いてきた。 

 無計画な上に無謀に進められた先の大戦は、勝手に起きたものではない。議を尽くさず成り行きで戦争を遂行し、国民に途端の苦しみを与えた。

 戦争を引き起こした者の責任と同時に、戦争を遂行した者の責任が問われなければならない。

 ところが、誰も責任を取らない。また、取らない体制を敢えて生み出した。この無責任体制が、戦後もずっと続いて今に至っている。 

 半藤氏の原点は14歳当時、東京大空襲焼夷弾の大雨の中を逃げまどったことである。あまりにも悲惨な状況に、無謀な戦争に突き進み多大な犠牲を生んだ日本の近代史を描こうと決意した。

 「昭和史を知らなければ、病巣の克服は出来ない」という信念で、書き続けてきた。 

 戦争の功罪を知らずして日本が軍事大国化すれば、これほど無謀な行為はないと言わざるを得ない。                                                                         合掌