「温故創新」180509 N232 伊波喜一

人を見る目の優しさに 誘われて 心根優し だるまとてんぐ

絵本作家の加古里子かこさとし)が亡くなった。享年92歳、最後まで創作意欲を失わなかった巨星である。代表作は「かわ」。氷に閉ざされた北国に春が訪れる。雪解け水が渓谷を下り、人々の生活を潤し・耕しながら、大海へと注ぐ様を描いている。科学者らしいリアルな自然の描写と、生活に役立てていく人との関わりを丁寧に描いている。初任時代に「かわ」を手にした感動は忘れられない。 ほかには「どろぼうがっこう」「だるまちゃんとてんぐちゃん」「からすのパンやさん」がある。善悪を固定的に見ないで、相手の言い分や良さを見いだそうとするところに、多くの読者が共感を覚えるのだろう。 かこは言う。「子どもは一人一人、審美眼を持っています。子どもは、自ら楽しみを生みだす力を持っています。ですから、大人が力を注ぐべきことは、子どもが興味を持った世界に一歩ずつ入り、深いところまで行き着けるよう、誘うことです」。

社会には、どうしてもその社会全体に同質化への力が加わる。その圧力から、自由に生きることは難しいことだ。しかし、互いの違いを認めることは出来る。かこ作品はその事に気づかせてくれる。