「温故創新」220913 N1109 伊波喜一

感じ方 人それぞれに 違うかな 辛さの不思議 刺激たまらず         

 南西諸島に暴風雨が来ている。今年は台風の当たり年である。農作物の収穫にさしかかるだけに、被害が少ないことを祈るばかりである。

 甘味、塩味、酸味、苦味、うま味は、味の基本5要素である。これ以外に、辛さがある。カレーの辛さもあれば、キムチの辛さもある。

 こうしたスパイスの刺激を脳がどう受け取っているのかは、長らく謎だった。昨年度のノーベル生理学賞では、スパイスの辛さを感じる受容体について研究成果が報告された。それによると、脳は「辛さ」を「痛み」として伝えることが分かった。

 「痛み」をなぜ、うま味と感じて病みつきになってしまうのか。それは、痛みを和らげようとして、脳内でエンドルフィンやドーパミンが出るからである。これらの物質は、鎮痛作用や多幸感、やる気を育むことで知られている。

 この研究成果は、示唆に富む。まさに、毒を制して薬と為すである。 

 私達は五味のように、誰もが納得して受け入れられる味に囲まれているわけではない。マイルドな辛さなら良いが、激辛という場合もある。しかし、そういう味に少しずつ接することで、やがてその味に慣れていく。このような対応を繰り返すことで、辛さに対する免疫がいつの間にかついてくる。

 人の本来持っている応対力には、底知れない力が秘められているように感じている。

「温故創新」220910 N1108 伊波喜一

呼吸器は 病原体の 侵入を 防ぐ機能よ 前線基地と         

 朝夕が涼しい。夜風が肌寒くて、薄手のかけものがないと、風邪を引いてしまいそうだ。

 普段、私達は何気なく呼吸している。呼吸の数は、一日に2万回以上と言われ、1万4400㍑もの膨大な空気を取り込んでいる。

 喉と肺とは深く関連している。肺炎は近年、日本人の死因の3位と高い割合を占めている。特に80代の高齢者の肺炎患者の約8割が、誤嚥性肺炎である。

 この肺の機能が衰えると、生活することが困難になる。コロナの重症患者が肺機能を侵されたことからも分かるように、肺の機能が衰えることは致命的なダメージとなる。

 その肺を鍛えるには、腹式呼吸と併せて音読やおしゃべりが有効である。声を出すことで喉の筋肉を鍛えられ、誤嚥性肺炎を防げる。また、脳の活性化につながる。日常の勤行や唱題を続けることは、その点でも理に適っている。

 古代インドでは古来、人間の体は「地」「水」「火」「風」の4つの要素が和合すると捉えてきた。「風」は呼吸や新陳代謝を表わす。

 この風が乱れると、気胸や肺梗塞、肺疾患、低酸素状態の症状が出る。コロナ下ではまさに、これらの症状が重なり合って重症化した。

 喉や肺の働きを最大限活かすためには、細心の注意を払って心身のリズムを整えていかなくてはならない。

「温故創新」220908 N1107 伊波喜一

国民の 心の支え 女王の 職務と奉仕 最期の日まで        

 8日、エリザベス女王が、北部スコットランドにあるバルモラル城で亡くなった。享年96歳。心よりご冥福を祈りたい。

 エリザベス女王は1952年、当時25歳の若さで即位した。在位期間は英国の君主として、歴代最長の70年にわたった。この間、ナチスによるロンドン大空襲を耐え、国民と共に英国の復興を成し遂げてきたことに、国民の信頼が寄せられた。 

 女王の死去を受けて、長男のチャールズ皇太子が即位した。チャールズ新国王は1948年生まれで、現在73歳。早い時期から、気候変動に警鐘を鳴らすなど、環境問題への関心が高いことで知られる。

 英国の皇室は日本とも縁が深く、今上天皇が留学先に選んだのはオックスフォード大学だった。日本を離れて寮生活を楽しまれている当時の様子は、日本のみならず世界の人達から共感が寄せられた。

 英国は不思議な国である。女王を始め、女性宰相もリズ・トラス首相で3人目となる。女性の権利を謳うだけででなく、実際に実務を任せていく。大したものだと思う。

 今後、日本が世界に踏み込んでいくには、語学力と寛容の精神を身につけていかなくてはならない。異文化圏では言葉の説明がなければ、齟齬をきたす。同時に、異文化を受け入れる包容力がなければ、摩擦を引き起こす。

 日本の教育も、この2点に特化して行うべきではなかろうか。

「温故創新」220907 N1106 伊波喜一

恐竜の 謎の解明 ゴビ砂漠 歩行の様子 足跡で知る        

 台風一過で、北陸はフェーン現象が起きている。35度にも達し、夏が戻ってきたような暑さだ。玄関の沙羅は、上枝から下枝まで虫に食われている。茶毒蛾だと思われるが、目を凝らしても見つけられない。気候変動の影響で、害虫が活発化しているのかも知れない。

 岡山理科大などがモンゴルのゴビ砂漠を調査し、恐竜の化石を千個以上発見した。足跡が連なった「行跡」が23本見つかり、長いものでは30㍍ほど続いている。恐竜の歩き方や歩く姿勢の解明につながると、期待されている。

 見つかった足跡や行跡は、約9千万年前~7千万年前の白亜紀末期のものと見られる。体長6~25㍍ほどの植物食恐竜「ティタノサウルス類」などが、残したものと思われる。ティタノサウルスは骨格からすると、がに股のように歩きそうだが、実際にはそうではない足跡もあったという。

 あれだけ広い砂漠上から僅かな化石を見つけるなど、奇跡に近い。それが当時のままの姿で、現存している。

 このように地道な努力を続けるには、当人達の粘り強さは元より、資金面や組織面でその学問を支援していかなくてはならない。その際、成果主義に陥るのではなく、いかにその事業を継続していくかを念頭に置かなくてはならない。

 須らく、物事は継続して初めて実を結ぶものなのだ。

「温故創新」220906 N1105 伊波喜一

あまりにも ひどい円安 食上がり 是正すべきは 国の借金        

 円安が止まらない。1ドル=142円になれば、輸入品目が値上がりするのは避けられない。

 円高にしたくても、米国のFRBの了承を得なければままならない。インフレが加速しかねない米国は、日本の利上げを認めることなど出来ない。したがって、FRBが円の利上げを認めることはない。その間、日本は割を食い続ける。

 考えてみると、これほど不公平な慣行はない。近くは沖縄の祖国復帰前の、ニクソンショックがある。それまでの固定比率(1オンス=35ドル)による米ドル紙幣と金の兌換を、一時停止した。

 ドルの金交換に応じられないほど、米国の金保有量が減った。その結果、戦後の金とドルを中心とした通貨体制を維持することが、困難となった。

 日本は先の大戦後、占領軍の統治下に置かれた。その際、自国通貨も管理下に置かれた。それが今もって続き、ドルの支配下に置かれている。自国の金利一つ、自ら決められないというのは、自由主義国家の名が泣こうというものだ。

 この不条理を解決していかない限り、いつまでも日本の主導権は取れない。同時に、国の政策を明らかにして、借金に頼らない健全な財政運営を心がけるべきであろう。

 財政再建のメドの経たない国家運営など、砂上の楼閣に等しい。

「温故創新」220905 N1104 伊波喜一

空洞化 中間層の 見直しを 砂粒化防ぎ 関係築かん       

 上さんの定期健康診断で、東大和病院に付き添う。還暦を過ぎると、特に健康診断は欠かせない。小さな変化を見落とさず、とにかく早期発見と処置を心がけたい。

 旧統一教会が、想像以上に政治家に食い込んでいる。反社会的勢力と政治家の癒着は、由々しき問題である。旧統一教会を宗教団体と定義し、あたかも政治と宗教とが一体化しているかのような印象をマスコミは喧伝している。しかし、旧統一教会は宗教団体ではない。宗教の仮面を被った、マルチ商法団体である。

 政教分離の原則は、あくまでも国家が特定の宗教を保護しないということである。明治以来の神社を国家の精神的支柱として言論・思想統制した誤まりを、反省した結果である。

 古今東西を問わず、宗教の果たす役割は大きい。それは個人の救済に留まるだけでなく、社会にも大きな影響を与えている。

 国家は規模が大きすぎて、個人の意思が伝わらない。国家の意図を議論し、互いの意思をやりとりする場がどうしても必要になる。

 意思の伝達は、トップダウンで済むものではない。それを掬い取り、話し合い、またトップに戻すことが必要となる。そこに、中間的役割としての宗教団体の存在意義と価値がある。

 砂粒化しつつある現代社会だからこそ、中間団体の受け皿が求められるのではなかろうか。

「温故創新」220902 N1103 伊波喜一

人工の 芝の改良 急ピッチ 熱さ抑えて 火傷防がん       

 台風11号の影響で、湿気がすごい。早朝、屋外では湿度が80%もあった。汗が衣服にまとわりつく。さすがに炎暑には戻らないだろうが、暑い日々はまだ続きそうだ。

 人工芝は需要が高い。素材に合成樹脂を用いており、天然芝と比べて耐久性が高い。反面、直射日光を浴びると、表面温度が70度以上になると言われる。そのため、やけどや熱中症の危険がある。

 そこで芝の隙間にまかれる充填剤に、保水性が高い植物繊維を混ぜてみた。また水に触れると冷却効果を持つ石灰岩を混合した、天然素材の土を使ってみた。すると気化熱効果で、表面温度を20度近く下げることが出来た。その他にも、充填剤にお茶の製造後に出る茶殻を再利用し、熱を下げて保水機能を高めている。

 赤土を原料とする琉球赤瓦は、焼きしめることで高温に耐えられる。沖縄の直射日光の強さは、比類がない。そこで屋根にこの赤瓦を乗せると、熱を適度に吸収しつつも弾き返す。

 これ以外にも、身近にある素材の特性を活かした例は、枚挙に暇がない。例えばアメンボが水中を滑るように泳ぐのは、揮発性の働きによる。そこにヒントを得て、ゴアテックスなど防水性の高い繊維が開発された。

 人智を磨くのに有効な手段は、案外、自然界の中にそのヒントがあると言えるのではないだろうか。