「温故創新」201120 N596 伊波喜一

がん10年 生存率が 上昇し 全国的に 治療の効果  

 昨夜来の風で、道路に枯れ葉が吹き寄せられている。今夜から例年並みの寒さに戻るとの予報だ。 

 国立がん研究センターは、がん10年後の生存率が上昇したと発表した。

 2004~07年にがんと診断された人の10年後の生存率は58.3%で、2003~06年に比べ1.1ポイント上昇している。1999~2002年が54%だったので、少しずつ生存率が高まっていることが分かる。 

 部位別で生存率が目立って低かったのは、膵臓がん(6.2%)である。

 膵臓がんは自覚症状がないだけに、見落としてしまいがちだ。肝臓がん(16.1%)、胆のう胆道がん(19.1%)が後に続く。 

 一方、生存率が高いのは前立腺がん(98.8)%で、乳がん(86.8%)、甲状腺がん(85.7%)と続いている。 

 今回、がん治療専門の21施設、9万4千人の患者情報を対象にした。広範なデータから得られる知見は、今後の道標となる。過信と慢心・油断を排して定期的に検診を受けることで、多くのがんは再発を免れやすくなっていると言っても過言ではない。 

 心の健康は身体の健康と密接に関連している。

 健康不安に怯えすぎずさりとて過信せず、日常を前向きに生きたい。

「温故創新」201119 N595 伊波喜一

全国で 児童虐待 広がりて 29年 最多更新 

 まるで春を思わせる陽気だ。柿の実がたわわに成っていて、青空に映える。明日はさらに暑くなるとのことである。 

 全国の児童相談所が2019年に対応した全体の件数が、19万3780件に上った。

 1990年度の統計開始以来、29年連続で最多を更新した。前年度からの増加数も3万3942件で、過去最多だった。 

 厚労省によると、身体、ネグレクト(育児放棄)、性的、心理的の虐待4類型のうち、最多は心理的の虐待4類型のうち、最多は心理的虐待で10万9118件にのぼる。 

 警察の通告による対応が年々増え、19年度は9万6473件で全体の50%となった。これは10年前の15倍に匹敵する。 

 子どもの前で家族に暴力を振るう「面前DV」も増えている。

 身体的虐待は4万9240件、ネグレクトが3万3345件、性的虐待が2077件となっている。 

 経路別では近隣知人が13%、家族親戚が8パーセント、学校7%と続いている。近隣・家族を合わせても2割強にしかならない。

 困り切っている時に、周りに安心して相談できる人がいない社会は、不幸である。 

 人は一人では生きていけない。お互い様という発想なくして、豊かな共生社会を築くことは出来ない。

「温故創新」201118 N594 伊波喜一

ワクチンの 有効性に 光あり 輸送保管の 課題解決 

 朝から暖かい。Yシャツ1枚でも、動くと汗ばむ陽気だ。季節の変わり目だけに、体調管理に留意したい。 

 新型コロナウイルスのワクチンの早期実用化への期待が、一段と高まっている。

 米バイオ医薬品企業モデルナは、開発中のワクチンの臨床試験(治験)で95.5%の有効性が見られたと発表した。 

 開発中のワクチンは保管や輸送のたやすさが特徴で、2~8℃の標準的な医療用冷蔵庫では1カ月間保管できる。マイナス20℃なら、6カ月も保管できる。 

 現在、米ファイザー社と独ビオンテックが共同開発しているワクチンの治験も、9割超の有効性を発揮している。

 しかし、保存法に難があり、マイナス90℃での冷凍保存が必要となる。通常の冷蔵保管では5日間しかもたず、輸送に課題がある。 

 モデルナは米当局が認可すれば年内に2千万回、2021年に5億~10億回分を製造できるとしている。

 この報を受けて、ニューヨーク株式相場は2万9950ドルと史上最高値を記録した。ワクチンの実用化で滞っている経済を動かし、消費を喚起することへの期待感が現れている。 

 私達には、安心で安全な生活を営む権利がある。生存権を満たすものに、人の心はなびくのだ。

「温故創新」201117 N593 伊波喜一

不妊治療 親子関係 明確化 民法特例 法案提出 

 朝刊を取りに出ると、サクランボの葉が数多落ちている。

 これから師走にかけて、掃いても掃いても落ちてくる。明春の栄養を樹木に貯めて、その役目を果たし終えた枯れ葉は美しい。 

 自民・公明など与野党5党は、不妊治療で卵子提供などにより生まれた子の親子関係を定める民法特例法案を参院に提出した。 

 法案では第三者からの精子を提供された場合、提供者ではなく出産した女性を「母」と規定している。第三者からの精子提供に同意した夫は、妻が産んだ子を摘出否認できないとしている。 

 現行法は人工授精や体外受精など、生殖補助医療による出産を想定していない。

 特例法案は、精子卵子の提供により生まれた子の法的な身分を確立するのが目的である。 

 待ち望まれてきた法案が、提出された。国内ではいまだ代理出産が認められていない。

 そのことが代理出産ビジネス等を助長している。悪徳ビジネスの中には、生への尊厳が全く見られず、女性を子どもを産むための機能として扱っている。  

 女性にとって子どもを宿し、育み、産むことは、大きな困難を伴う。

 この法案によって、これまで弱い立場に置かれてきた女性の人権を守ることが出来ることは、素晴らしい。

「温故創新」201116 N592 伊波喜一

分断と 憎悪の社会 立て直す 経済再生 命の重み

 イチョウ並木が色づいている。赤・茶・黄色に混じって薄緑の葉が、顔を覗かせている。わずか2~3日で、自然は大胆に表情を変える。

 社会全体で、分断と憎悪が広がっている。

 米国大統領選に見られるように、互いが互いを信頼できず反目し合う。これは、米国だけの問題ではない。

 トランプ氏はやっと、バイデン氏への敗北を認めたが、この間の騒動を拡散した罪は大きい。 

 米国に倣って、日本でもリベラルの考え方が普及していた。

 しかし今、リベラル的な価値に対する反発は大きくなっている。その根底には、リベラルな言動を取ることの出来る人々がエスタブリッシュになっていることが挙げられる。 

 労働運動や教会、町会活動といった個人を支えるソーシャルキャピタル(社会資本)がなし崩し状態になり、資産価値は下がり、公助もあてに出来ない。 

 今後の舵取りは難しいが、社会保障制度を最低限残しつつ、個人を支える制度に投資していくことが大事である。

 教育や出産・育児、保育、介護など、個人の力を発揮できるように下支えをする。そして、税金を納め、国民に還元し、潤いのある生活を皆が送れるようにする。 

 経世済民の極意は、皆が食べられることに尽きる。

「温故創新」201115 N591 伊波喜一

難病の 克服いかに 解決す 医療の進歩 120歳に

 微かな音を立てて、枝枝からすべるように葉が落ちる。微風があるからだろうか、時折落ち葉が風に舞う。今夜は寒くなりそうだ。 

 医療の進歩は目覚ましい。私が生まれ育った昭和30年代は、アトムの時代である。科学や医療の進歩が人類を幸福にするということが、夢物語として語られていた時代だ。当時からすると、科学も医療もその進歩が著しい。 

 医療の今後の見通しだが、2025年までには初の本格的認知症薬が誕生する。30年までにはAIによる診療が主流となり、感染症の脅威から解放される。

 35年までにはほとんどのがんが、治癒可能となる。40年までには神経難病の克服、糖尿病の解決、様々な臓器が再生可能になる。

 そうなると、人類は120歳まで生きることが可能となる。

 ここで大事なことが、ヘルスリテラシーである。コロナ禍に見られる過剰なまでの不安や、その逆に過剰な健康志向を改めていく必要がある。 

 120歳まで生きるのだから、無病息災でいられるわけがない。

 むしろ、多病息災を心がけ、病を自らの個性として生きる姿勢こそ問われよう。

 古き書物には「蔵の財(たから)より 身の財。身の財より 心の財 第一なり」となる。 古人の言葉は味わい深い。

「温故創新」201114 N590 伊波喜一

DVの 被害深刻 コロナ禍で 7つの習慣 まず傾聴を

 窓から差し込む陽射しが眩しい。予報通り、日中は汗ばむ陽気だ。  

 新型コロナの影響で、外出自粛やテレワークが急速に広がった。

 それに呼応するように、5~6月のDV(家庭内暴力)相談件数は1万7500件と昨年度比1.6倍にのぼった。7~8月は1万6000件と、これも前年度比1・4倍と激増している。

 ここでいうDVは殴る・蹴る行為だけではない。支配・被支配の関係性も含む。 

 本来、人間関係はフラットでなければならない。その関係を築くために有効なのが、7つの習慣である。その筆頭に傾聴がくる。 

 傾聴のポイントは、以下の3つである。①話す比率1に対して聞く比率を2にする。

 ②今やっている作業をやめて耳を傾ける。③「だ行」の相槌を止めて「さ行」の相槌を打つ。 

 だ行の相槌とは「だから、言っただろう」「どうせ」「だめだめ」などの否定語である。

 それに対してさ行の相槌は「そうなんだ」「さすが」「それは知らなかった」「素晴らしい」などの肯定語である。まさに、さ行の相槌は魔法の言葉である。 しかしこれは、単なる言葉の技術ではない。相手を尊重し、共に生きていこうとする心がけの現れである。

 傾聴と励ましは、表裏一体であるのだ。